2XXX年、従来の知識詰め込み型教育は完全に姿を消していた。AIが全ての情報を瞬時に提供できる時代において、単なる知識の蓄積はもはや無意味となったのだ。
新たな教育システムでは、「思考のプロセス」そのものを学ぶことが中心となった。例えば、「問題発見能力」を育成するための仮想現実体験学習や、「創造的思考法」を鍛える脳波フィードバックトレーニングなどが導入された。
さらに、AIとの対話を通じて自らの思考の癖を分析し、それを克服していく「メタ認知力強化プログラム」も必修科目となった。
AIの進化により、人間の「思考停止度」を定量的に測定する技術が開発された。この技術は、脳波パターンと行動データの分析を組み合わせることで、個人の思考の柔軟性や創造性を数値化するものだった。
従来の学歴や職歴に代わり、この「思考停止度」が社会的評価の新たな基準となった。企業の採用活動や昇進の判断、さらには政治家の資質評価にまで、この指標が活用されるようになったのである。
AIが多くの職業を代替する中、皮肉にも「人間らしさ」を発揮できる職業への需要が急増した。例えば、AIのアウトプットを解釈し、人間社会に適用する「AI-ヒューマン インターフェイサー」や、異分野の知識を統合して新たな価値を創造する「クロスドメイン シンセサイザー」などの職種が生まれた。
さらに、AIとの協働を前提とした新たな職種も次々と誕生した。「AI倫理コンサルタント」「量子意識デザイナー」「バイオデジタルアーティスト」など、人間とAIの能力を相互補完的に活用する職種が台頭したのである。